Before dawn〜夜明け前〜

溺愛されて守られる人生

いつもなら、パーティなどがある時、いぶきは屋敷で留守番をしている。

今回の一条グループの創立記念パーティでも、それは同じはず、だった。


既製品の、それでも奮発した黒のセクシーなドレスに身を包んだ玲子が、両親と共にパーティ会場へと向かった。

いぶきは門の外でお辞儀をして彼らを見送る。


すると風祭家の車が出発したのを見計らって、黒塗りの高級車がやってきた。

「青山さん」

運転席から顔を出したのは黒川だ。

「拓人に言われて迎えに来たよ。
そのままでいいから、乗って」

「そのままって…私、この格好よ?」

いぶきは、メイド服に身を包んでいた。

「大丈夫だよ。思ったより時間がないから、急いで屋敷の施錠したら、車、乗って」

拓人の指示と聞いて、いぶきは言われた通りに屋敷の施錠をして黒川の車に乗り込んだ。
車が走り出す。

「黒川くん…車、運転出来るんだね」

実年齢を知っていても、違和感を感じた。
しかも、いつもブレザーの制服姿しか見ていないので、黒いシャツに黒いスーツ、派手な柄ネクタイの黒川の格好も、なんだか不思議だ。

こうしてみると、やはり、大人でヤクザなんだと思う。

「高校一年生なのにね。

青山さん。
念のため、聞いておきたいんだけど。


ヤクザの姐さんになる気ある?
俺、今22歳。
もし、姐さんになってくれるなら、俺、高校は辞めて若頭補佐に専念する。

溺愛して、目一杯贅沢させて、優しく真綿で包むように守ってあげる。
辛かった事なんか全部忘れさせてあげるから。

どう?」





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