Before dawn〜夜明け前〜
「拓人。
私、今は、桜木さんを選ぶ。
だって、今しかないから。
だけど、未来は。
あなたがいなければ、私の未来は結局、闇の中を一人で彷徨うだけなの」
拓人は、いぶきを見た。
期限の見えているわずかな親子の時間。幸せであればあるほど、失うショックは計り知れない。
いぶきは、それをわかっていてそれでも桜木を選んだ。
自分はこれから彼女を手放す事で、孤独と不安の中、もがき苦しむだろう。
だけどそれを糧に、今より強い男になって、その時がきたら、桜木の代わりに手を差し伸べてやる。
一人になった彼女が落ちる闇から、再び救えるのは、拓人しかいない。
「俺も、力をつけるから。
いつか二人で、世界の扉をこじ開けてその頂点に立ってやろうじゃないか。
その時こそ、新たな“一条”の夜明けだ」
拓人の差し出した手をいぶきはぎゅっと握り返した。
この手が好きだ。
手を引いてくれたり、背中を押してくれたり、体を支えてくれたり。
拓人の手はどんな時もいぶきを救ってくれる。
他人の手は、いぶきにとって脅威でしかなかった。暴力を振るわれるばかりで、怖かった。
それなのに、なぜだろう。
この手に触れられたら、ほんのり温かくなって、安心できる。
なぜ。
それは、きっと、「信頼」しているから。
「よし。
じゃあ、未来に乾杯しよう。
言っておくがな、ボン。
生きる希望が出来たからオレぁ、そんな簡単には、くたばらねぇからな。
いざってときは、このオレからいぶきをかっさらえるくれぇ、強くなれよ」
「あはは、拓人なんぞ百年かかっても先輩には敵いませんよ。
やっぱり青山さんは、とんでもないジョーカーだった。
この後、一条にとって吉と出るか凶と出るか…
楽しみですよ、先輩。
拓人、お前も相当頑張らないと」
勝周に肩を叩かれて、拓人は苦笑いを浮かべる。
本人すら知らなかったいぶきの正体を見抜いた父を、素直に凄いと思う。
その父を超えて、強く大きくなりたいと、いや、なるのだと決意する。
拓人の決意に満ちた表情に彼の成長を見つけ、桜木は満足して乾杯で重ねたグラスを口に運んだ…
私、今は、桜木さんを選ぶ。
だって、今しかないから。
だけど、未来は。
あなたがいなければ、私の未来は結局、闇の中を一人で彷徨うだけなの」
拓人は、いぶきを見た。
期限の見えているわずかな親子の時間。幸せであればあるほど、失うショックは計り知れない。
いぶきは、それをわかっていてそれでも桜木を選んだ。
自分はこれから彼女を手放す事で、孤独と不安の中、もがき苦しむだろう。
だけどそれを糧に、今より強い男になって、その時がきたら、桜木の代わりに手を差し伸べてやる。
一人になった彼女が落ちる闇から、再び救えるのは、拓人しかいない。
「俺も、力をつけるから。
いつか二人で、世界の扉をこじ開けてその頂点に立ってやろうじゃないか。
その時こそ、新たな“一条”の夜明けだ」
拓人の差し出した手をいぶきはぎゅっと握り返した。
この手が好きだ。
手を引いてくれたり、背中を押してくれたり、体を支えてくれたり。
拓人の手はどんな時もいぶきを救ってくれる。
他人の手は、いぶきにとって脅威でしかなかった。暴力を振るわれるばかりで、怖かった。
それなのに、なぜだろう。
この手に触れられたら、ほんのり温かくなって、安心できる。
なぜ。
それは、きっと、「信頼」しているから。
「よし。
じゃあ、未来に乾杯しよう。
言っておくがな、ボン。
生きる希望が出来たからオレぁ、そんな簡単には、くたばらねぇからな。
いざってときは、このオレからいぶきをかっさらえるくれぇ、強くなれよ」
「あはは、拓人なんぞ百年かかっても先輩には敵いませんよ。
やっぱり青山さんは、とんでもないジョーカーだった。
この後、一条にとって吉と出るか凶と出るか…
楽しみですよ、先輩。
拓人、お前も相当頑張らないと」
勝周に肩を叩かれて、拓人は苦笑いを浮かべる。
本人すら知らなかったいぶきの正体を見抜いた父を、素直に凄いと思う。
その父を超えて、強く大きくなりたいと、いや、なるのだと決意する。
拓人の決意に満ちた表情に彼の成長を見つけ、桜木は満足して乾杯で重ねたグラスを口に運んだ…