Before dawn〜夜明け前〜

「この子はね、背中の開いたドレスは駄目だから。その分、胸元を深くカットしましょ」

いぶきはとりあえず用意してあったドレスを試着する。
そのデザインをベースにジュンが色々指示を飛ばしていくのだが。
ジュンがドレスの胸元を修正しながら、苦笑した。


「…あらま。

いぶきちゃんも、大変ね。

拓人ったら、結構、執着気質なのね」


胸元にクッキリと拓人の付けた印があった。


「ごめんなさい、ジュンさん。
夏服だと見えちゃうからやめてほしいんですけど、お父さんの事務所に行く時は派手につけられちゃうんです。
もう、恥ずかしい」

「わからないでもないわね。
オヤジの事務所っていったらハイエナみたいな男どもの溜まり場だもん。俺のものだって証のつもりでしょ。
まぁさすがにオヤジの娘ってわかってて手を出すほどのバカはいないと思うけどねぇ。


うん。いいわね。
ドレスは、他にもデザインしておくから、必要な時はいつでも言って。
オヤジに会えるなら、アメリカだって飛んでいくから〜」

ジュンは、本当に桜木に惚れ込んでいるようだ。いぶきは、もう苦笑するしかない。



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