俺様課長のお気に入り
週末になって、要君の宣言通り新しいマンションに引っ越した。
ケイ君は、初めての場所に少しだけ警戒しながら、鼻をクンクンさせていろいろと確認をしていた。

「陽菜、気に入ったか?」

「うん。キッチンも広いし、日当たりもいいし、いい部屋だね。あっ、職場までの距離も変わらないしね」

「ケイは気に入ったか?」

「ワン!!」

一通りチェックがすんだのか、ケイ君がもどってきた。

「陽菜もケイも、俺が幸せにするからな」

そう言って、要君は私とケイ君を一緒に抱きしめてくれた。
ここから、私達の新しい生活が始まると思うと、幸せな気持ちで胸がいっぱいになる。




はずだった……

ううん。
幸せいっぱいには違いない。


ただ……



以前言われた真美さんの言葉が、現実になった。



結婚して、一緒に暮らすようになって、要君はどんどん過保護になっている。
それはまるで、翔君のよう。
いや、それ以上だ。


「おはよう、陽菜」

夜は毎晩抱きしめられながら寝て、朝はキスで起こされる。
もちろん、仲良く一緒に出勤する。
何かと用を作っては、総務課を覗いていく。
仕事は大丈夫なのか……と心配だけど、どうやらこれまで以上の成績を上げているらしい。

「陽菜ちゃん、相当愛されてるわね」

最初こそ祝福してくれていた夏美先輩や山川さんも、若干引き気味になってきた。





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