俺様課長のお気に入り
午後の業務が始まった。

「えっと……経理課と営業課か」

おつかいを頼まれて社内を歩き回っていたら、営業課に向かう途中で坂田君に出くわした。

「あっ、坂田君おつかれさま。これから外回り?」

「ああ。今から出るところ。
あっ、そうだ陽菜。このあいだ言ってた、ケイ君と岩崎さんと出かけるとかいうのは、どうなったの?」

「ああ……日曜日に行ってきたよ。思っていた以上に、ケイ君と岩崎さんが仲良くなっちゃって……また予定の合う時に、3人で出かけることになったの」

「3人でって、大丈夫なのか?2人の時間の邪魔になってるんじゃないのか?」

「そうなの。ケイ君とのラブラブタイムがぁ……」

「ラ、ラブラブ……」

「まあ、でもケイ君自身が喜んじゃってるから、仕方がないのよ。
あっ、時間大丈夫?いってらっしゃい」

「あ、ああ。いってくる」





「山川さーん。お届けものです」

「ああ、陽菜ちゃん。ありがとう」

「じゃあ、確かに渡しましたからね。おつかれさまです」

さて、もどるとするか。

踵を返すと、外から戻ってきたであろう要君にばったり会った。

「おお、陽菜か」

「あっ、かな……じゃなくて、岩崎さん。おつかれさまです。日曜日はありがとうございました」

「ああ。今度はまた、違う所に連れて行ってやるからな」

「はあ……」

「おい、もっと嬉しそうにできないのかよ!!」

「いやあ、本当にまた行くのかと思いまして……」

「あたりまえだ。俺は嘘は言わないからな。
じゃあ、また連絡するわ」

そう言うと、私の返事も聞かないで、片手をひらひら振って去っていった。

「まあ、いっか」

全てはケイ君を喜ばせるためだ。
よし、もうひと頑張りしよ。



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