蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
 不安を振り切り、お風呂を沸かしてゆっくり浸かり、身体をぴかぴかに磨く。昨日温泉に入ったばかりのせいか、悩んでいる割にお肌の調子はとてもいい。
 それから湯上りの身体にボディクリームを丁寧に馴染ませる。もう何年も使っているから、そろそろ私の身体にはこの香りが染み込んでいるのではないだろうか。


「初恋の香り、か……」


 リビングのソファーで蓮司さんの帰りを待ちながらボディクリームのキャッチフレーズを呟いた。ずっと恋をしたことがなかったから、私の初恋はあの白詰草の思い出なのだということにしてきた。でも今こそ、私は初めての恋をしているのかなと思う。

 そこでふと考える。今までずっと引っ掛かってはいたのだけど、思い出を運命っぽくするためにうやむやにしてきたこと。
 朧気にしか覚えていないけれど、あのときの男の子の髪は漆黒で、シャープな顔立ちだったように思う。少なくとも今の橘部長とはかなり違っている。


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