蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
***

 その夜は蓮司さんが接待で遅くなるので、私はひとりで夕飯を済ませ、エントランスの石庭でしゃがみこんでいた。


「那智黒か……」


 黒い玉砂利の品質を吟味し、飛び石を丹念に眺め、申し分のない石材にさすがだなと感心する。造園業から興った家系の職業病のようなものだ。


「水を撒くと綺麗なんだけどな」


 黒い玉砂利の美しさは雨が降ったときに最も発揮される。勝手に水を撒いたら怒られるだろうか?


 怒られるというワードから、私は先ほどまで頭を占めていた問題にまた戻って悩み始めた。発端は今朝やらかした失敗だ。

 今朝、早起きした私はランドリーサービスに出すはずの彼の衣類を出勤前に洗濯機で洗った。まあたまには婚約者らしいことでもしてあげようという、茄子の罪滅ぼしのサービスのつもりだった。

 ところが、あろうことか洗濯物の中にティッシュが紛れ込んでいたらしく、それが効果絶大──いや被害が甚大で、彼の黒いTシャツに屑がびっしりついてしまったのだ。なぜか私の服にはあまりつかなかったのが皮肉だ。

 そのときふと思った。これは家事ができない駄目女をアピールするチャンスではないかと。だから夕方、乾いたそれを畳んでソファーの上に置いておいたのだけど……。


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