蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「伝わってないか? お互いによく知っている間柄だから釣書は必要ない、と」

 顔から血の気が引いていく。

「まさか……」

「そのまさか、だな」

 ゆったりと構える彼の顔をまじまじと見つめ返す。何度目をこすってみても、目の前の悪夢のような光景は変わらなかった。

「いや、だって、私は橘部長だと……」

 ショックのあまり、無礼な文句が口から漏れた。

「残念ながら勘違いだろうな。ご指名は俺だ」

 鷹取蓮司はまったく残念だとは思っていない表情で笑った。

「そんな……」


 絶対に断ることは許されない、家業の存続をかけたお見合いの席。
 そこに現れたのは、この世で最も苦手な男だった。



< 8 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop