蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
鉄板に白詰草が圧し潰されていたのを覚えている。中の花は無事なのか心配でフェンスを登ろうとしたけれど足を滑らせて落ちてしまい、私は膝を擦りむいて泣いていた。すると見知らぬ男の子がやってきて慰めてくれた。
『僕が代わりに見てきてあげる』
彼は高いフェンスをするすると登り、向こう側に飛び降りたあと、しばらくして残念そうな顔で戻ってきた。
『更地になってて、これだけ残ってた』
男の子の手には根のついた白詰草がひと株だけ握られていた。
『ごめんね。この空き地を潰したのは僕のお父さんなんだ』
細かなことは記憶から抜けてしまったけれど、私たちはそこで少しだけ会話したことを覚えている。私は彼に名前を教え、将来の夢を語った。
『私、日本一素敵なお花屋さんになるの』
『いつか買いに行くよ』
彼が誰だったのかを知る手がかりはなく、その思い出は守られることのない約束としてセピア色に変わっていった。
あとになって、その土地には橘系列のホテルが建設されたことを聞いた。そして就職して、あの男の子が橘部長だとわかったのだ。橘部長の父親は病気療養のため現在は引退しているけれど、最近まで役員を務めていた。
『僕が代わりに見てきてあげる』
彼は高いフェンスをするすると登り、向こう側に飛び降りたあと、しばらくして残念そうな顔で戻ってきた。
『更地になってて、これだけ残ってた』
男の子の手には根のついた白詰草がひと株だけ握られていた。
『ごめんね。この空き地を潰したのは僕のお父さんなんだ』
細かなことは記憶から抜けてしまったけれど、私たちはそこで少しだけ会話したことを覚えている。私は彼に名前を教え、将来の夢を語った。
『私、日本一素敵なお花屋さんになるの』
『いつか買いに行くよ』
彼が誰だったのかを知る手がかりはなく、その思い出は守られることのない約束としてセピア色に変わっていった。
あとになって、その土地には橘系列のホテルが建設されたことを聞いた。そして就職して、あの男の子が橘部長だとわかったのだ。橘部長の父親は病気療養のため現在は引退しているけれど、最近まで役員を務めていた。