極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
 なんでって。そういう言葉で褒められ慣れていないからに決まってるじゃない。
 まして、言われた相手が織って。

 頭の中はぐちゃぐちゃだし、心拍数も速いし、身体も熱い。
 どうにか気持ちを落ち着けたくて、私は話題を変える。

「だ、だけど、すごい偶然だったね! 東雲百貨店で買い物でもしてたの?」
「違うよ。仕事でちょっと立ち寄ってみただけ」
「仕事?」

 織の仕事って、確かフランスのアパレル系の仕事をしているって聞いた気がするけれど。
 日本にも繋がりのある会社なのかな。それとも、こっちの会社に再就職?

「そう。だけど麻結に会えるなんて思わなかったから、うれしかった」

 臆面もなく『会えてうれしい』とか言うの……なんなの。
 やっぱり、海外で暮らしていたら表現の仕方とか変わるんだな。

「なんか織じゃない人みたい」
「どこが?」
「えっ……と、全部? ほら、こんなふうにすらすら喋らなかったし」

 織って、もっと口数少なくて、表情もこんなに豊かじゃなかった。まるで別人みたいだから、私はこんなに緊張しているのかも。

 実はさっきから、あんまり目を見れていない。今も自分の足元に向かって話しかけてる。

 すると、同じ歩調で並んでいた織が視界から外れた。
 私は一歩遅れて足を止め、織を振り返る。

「それはきっと、ようやく麻結に会えて感情が昂ってるから」

 その声に惹かれるように顔を上げた。
 織はとても真剣な面持ちで、不覚にもドキリとした。
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