極愛恋情~敏腕CEOに愛し尽くされています~
「や……。だからね? そういうセリフ言うキャラじゃなかっ……」

 私がたじろくと、織はすっと私の手を取る。

 無意識に息を止めた一瞬の間、彼の瞳に釘付けになった。

「本当の俺はこうだよ。ずっと抑えてただけ」
「え?」

 思考が止まる。

 目の前の人が、知らない男の人に見える。

 高い鼻梁に凛々しい眉。ガラス玉のような瞳が蠱惑的な色に変わる。
 全神経を、彼に奪われる。

「あまり目を合わせたら、触れたくなる。触れたら、抱きしめたくなる。今日まで、それを我慢してた。麻結を俺に夢中にさせる自信つけるまで」
「なに、言って……」
「留学するとき、俺、麻結に『待ってて』って言った。覚えてる?」
「それは……覚えてるけど」

 あのときのことは、胸の奥に残っている。
『待ってて』と言った織の気持ちはわからないままだったけれど、すごくひたむきな目色をしていたから。

「じゃあ、ちゃんと待っててくれたんだ」

 織はにこっと破顔し、私の顎に手を添えた。クイッと顔を上向きにしたあと、おもむろに鼻先を近づける。

 私がどぎまぎしていると、色香のある微笑みでささやいた。

「やっと心置きなく麻結を口説ける」

 私の中で、突然激しい嵐が吹き荒れる。

 甘く、ときめくような、経験したことのない風が――。
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