通信制の恋

((天野直 視点))


太陽の後押しもあり、俺は彼女を保健室まで運んだ。


ガラガラ


「あら、どうしたの？」


彼女を抱きかかえているため、手が使えず、乱暴だが足で扉を開けると保険医が少々びっくりした表情で椅子から立ち上がった。


「彼女の頭にバレーのボールが当たって。」


「あらまぁ…。軽い脳震盪を起こしてるかもしれないわね…。奥のベッドに寝かしてくれる？」


「はい。」


保険医に言われた通りに保健室の奥へと進み、ベッドに優しく彼女を下ろして、寝かせた。


「この子の名前とクラスは分かる？」


「はい。黒沢結、1-Bです。」


「はい、分かりました。彼女の担任の先生に話をつけて、彼女の親御さんに連絡して念のために病院に行ってもらうことにするわ。あなたもここまで運んでくれてありがとうね。」


彼女の名前とクラス名を間違えずに言うと保険医は不審がる素振りも見せず、保健室にやって来た生徒のリストに書き記した。


「いえ…。あの、彼女が目を覚ますまでここにいていいですか？」


「あなた、体育の授業中にだったんでしょ？出なくていいの？」


「彼女が心配なんで。」


「あらあら、まぁまぁ。それなら、私は彼女の担任の先生と話をしてくるから、彼女を見ててもらえる？」


「はい。」


俺が返事をすると保険医はそっと保健室を後にした。


俺は彼女のベッドの側にパイプ椅子を展開し腰掛け彼女の顔をじっと見つめた。


初めて彼女を見た時と一緒で艶めく黒髪のショートヘアに血色のいい肌、閉じられている瞼には長い睫毛が生えていた。


「はぁ…。」


改めて見ても、"可愛い"と思う俺は重症なのだろうか、俺はため息を漏らした。