死者の涙〜最期のメッセージ〜
「肋骨が五ヶ所骨折しています」

「肺に血が溜まっていますね」

藍たちはテキパキと解剖を進めていく。遺体の損傷は内臓にまで達していた。

「……内臓がスクランブルエッグのようだ」

聖が呟き、大河が真っ青な顔で頷く。ここまで凄惨な遺体は藍も久しぶりだ。

「これはやはり、原刑事がおっしゃった通り交通事故に遭われた可能性が高いですね」

藍がそう言い、原刑事が「よっしゃ〜!」と拳を挙げる。それを、如月刑事と大河が同時に睨みつけた。

やがて、解剖は終わり、藍たちはいつものように椅子を座る。

「交通事故ということは、加害者がいるはずだな。だが、現場に車はなかった」

如月刑事の言葉に、朝子が「ひき逃げじゃん……」と呟く。

「我々は、ひき逃げをした車の特定と男性の身元の特定を急ぎます」

如月刑事がそう言い、藍は「よろしくお願いします」と頭を下げた。



仕事が終わり、藍はエコバッグを片手に家へと帰っていた。その足取りは少し重い。

朝子たちは、正人のおごりでイタリアンのお店に行くそうだ。藍は大河に誘われたが、行きたい気分ではなかったため、断ったのだ。
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