過ぎた時間は違っても
人の目に止まりすぎてしまうから実家からは通わない方が良いとなって一人で暮らせるようなマンションに住まわせてもらってはいるけれど、人の目に止まりづらすぎてもと思うようになったのだろう。翔琉を転校させ、私と暮らさせたのも一人でいる私を心配してだから。

「翔琉先輩は知ってるの?」

「薄々感付いてはいるみたい」

冷たい風が二人の間を通り抜けた。まるで、病室へ帰れと急かすように強くて荒々しい風だった。私は半ば強引に羽季の手を引いて病室へと戻った。でも、風の言う通りにして良かったと思っている。
もうすぐ着くという所で、看護士に呼び止められた。今は行かない方が良いと。でも、私たちには何の事だか分からない話で事情を訊こうとした時だった。翔琉の怒鳴り声がしたんだ。
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