過ぎた時間は違っても
だって我が子を失っているわけだし、唯織が亡くなった後は完全に脱け殻になっていたもんな。どうして生きていなきゃいけないのって感じだった。唯織の祖母や俺の父、慶太郎おじさんも堪えていたみたいだけど叔母夫婦程ではなかった。

「後は元の世界にいなかった人物に注目してみるのもありかもしれないな」

「物語の世界でもそういう奴が鍵を握っている事が多いよね」

翔琉先輩の提案にそう言えばというように反応した唯織だったけれど、俺と唯織は顔を見合わせた。心当たりがあったんだ。元の世界にはいなくてこの世界にはいる存在、年の離れた俺の再従兄弟、唯織の兄弟になるべきだった叔母夫婦の子供。美幸さんや歩幸くんは関り合いがなかっただけで高校には入学していたし、違う学年までは分からないけれど同級生に見た事のない人はいなかった。
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