過ぎた時間は違っても
さっきまで、現役で試合に出ていたはずなのに。数歩リングに近付いただけで俺の持っていたボールが無くなっていた。点を取らせまいとすぐリングのそばに駆け寄ったけれど、唯織はもう点を取る姿勢に入っていた。だからボールの軌道を変えようと思いっきり飛んだ。でも、俺はボールの軌道を変えれたのでも点数を取れたわけでもなく唯織の被っていた帽子を落としてしまっただけ。確かにボールに触れた感触はあったのに、唯織が投げたボールはリングのネットを上下に揺らして下に落ちた。
たった一瞬、追い付いたはずだったのに。確かに触れたはずだったのに唯織の投げたボールはリングに入った。俺の持ちかけたゲームは一分も経っていないんじゃないかと思わせるくらいあっさりと終わってしまった。
やっぱり唯織は凄い。持病なんて感じさせないくらいあっさりと、実力があると言われている俺から点を取ってしまった。だから執着する事を止められないんだ。
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