私だって少女漫画の〇〇になりたいっ!
出会いの季節になりました!
ーー私の名前は、橋本水菜!
この春から高校2年生になる、ごく普通の女子高校生ですっ!(キラキラ〜!)ーー
…うん、少女漫画の学園ものとかってこういう感じで始まるよね……。
ひとりそんな妄想をして顔が緩んでいることにも気づかず、1年前と同じように、校舎の周りの桜の木から花びらがヒラヒラと風に舞うのを眺めていた。
そして、" あぁ、春が来たんだ "と、まるで子どもがおもちゃを買ってもらったときのように更に胸を躍らせる。
そう、春は…、恋の季節…!
新しい出会い…!
学年が上がり、学校生活が再び始まるという憂鬱な1日の朝に、私が胸を躍らせる理由はただひとつ。
少女漫画のような出来事が、現実世界でも生配信されるということにわくわくしていたからである。
「よし!観客として観覧するぞ〜っ…!」
「…でかい声でバカなこと言うんじゃない」
「あ、原田!おはよう」
「はよ〜」
眠そうに欠伸をしながら歩いてきたのは、小学校からの幼なじみであり、親友でもある原田。
原田は茶髪のボブで、目はキリっとしていて鼻筋も通った美人。
ただ、隣にいる私が周りに怯えられているせいなのか、彼女はあまり近寄れない隠れ美人になってしまっている
サバサバした性格で口は悪いが、私の話をなんだかんだいって聞いてくれる唯一無二の存在なのだ!
「橋本、課題全部やった?」
「原田よ…、それを聞くでない。」
「…終わってないんだな」
私たちはお互いに「原田」「橋本」と呼び合っている。 特に意味はない。
出会ったときからずっとそうだったから、その呼び名で定着していた。