私だって少女漫画の〇〇になりたいっ!


「違うの原田!聞くだけ聞いて…?」

私を置きざりにしたまま、スタスタと校舎の中に入っていくので、すかさず彼女を追いかける。

「言うだけ言って」

私のほうに顔を向けた原田は、あからさまに呆れ顔だった。
課題が終わらなかった理由を、長年の付き合いによって彼女は理解しているのだ。


「…羽恋1巻からまた読み返してたら、いつの間にか春休み終わってたの…!」

そう、これが理由。

言い訳にすらならないことは、自分でも十分わかっている。
しかし、少女漫画の世界に入り込んでしまうと、どうやら私は他のことが目に入らなくなってしまうらしい…
わかっているのに繰り返してしまう、私というやつは本当にどうしようもないやつだ。


「そんなことだろうと思った…
終わるまで居残り決定じゃん」

「!……そうだ…居残りだ……」

さっきまで私の胸は小躍りしてたというのに、一気にテンションガタ落ちである。
休みが終わって最初の日は大体こうなのだ。

課題が終わってない者は、終わる日まで居残りを多少なりともやって終わらせないといけない、という終わらなかった者への緩めの処罰が下される。

私も課題の存在を忘れていたわけではない。
ただ、考えないようにしていただけである。

「それただのバカだぞ」

私の心の声にすぐさまツッコミを入れてくる原田という女。 さすがだ…
ダテに長年私に付き合ってきたわけじゃないな。

原田には私の考えてることが全てバレているらしい。

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