私だって少女漫画の〇〇になりたいっ!
そう思った瞬間。
「嬢ちゃん、あぶねーな」
「…っ、ご、ごめんなさいっ…!」
「…え、え〜〜?」
思わず最後に出たのは私の驚きの声。
「あぁ、娘さん。 結局何だったんだ?
急にこんなとこ呼び出して」
完全にポカーン…状態の私に気づき、熊谷先輩は近づいてくる。
今目の前で何が起こったかと言うと…転びそうになった百合ちゃんを熊谷先輩のがたいのいい体が受け止め、百合ちゃんの体はすっぽり収まり、転ばずに済んだというわけだ。
良かった…良かったんだけど……
チラッと百合ちゃんのほうを見る。
「…っ…!!」
だよね〜〜っ!!
百合ちゃんの顔は隠しきれないほど真っ赤になっていた。
顔が熱いのか手で両頬を隠している。
あんなシーン、よく見るもん!
少女漫画でよく見るやつだもん!!
うわああああっ!
生で見れた喜びと、私は誰を応援したらいいのかという自分との葛藤で、心の中の橋本はもう大暴れさ……
「娘さん、聞いてんのか?」
「熊谷先輩って…無自覚に人を殺すんですね…」
「はあ…?」
私の前まで来た熊谷先輩は、こいつは何を言ってやがるんだという顔をしている。
きっと真壁くんもこの無自覚な優しさに惚れちまったのか……
百合ちゃんはきっと今、恋に落ちてしまった。
こんなはずじゃなかったんだ…真壁くんごめん……
私はやっぱり少女漫画が好きだから、百合ちゃんと熊谷先輩の恋愛模様が見たい〜〜っ!