レテラ・ロ・ルシュアールの書簡

「別に初対面でもないし、こうして逢ったのも何かの縁だよ。敬語使わなくて良いからさ。レテラって呼び捨てで呼んでよ」
(いや――呼んで下さい。お願いします)

 ぐるぐるとした不安が腹の中で渦巻く。平然としてるつもりだけど、出来てるかどうかは全然わからない。

 でも、幸いな事に晃は、
「うん。分かりました――ううん。分かった」
と、言ってくれた。
 僕はほっと胸を撫で下ろす。

「ん?」
 僕は不意に視線を感じて、下を見た。すると、火恋の大きな瞳と目が合った。彼女はじっと僕の顔を見て、次に晃に一瞥送り、向き直ってにんまりと笑んだ。

「なんだ?」

 僕の呟きに火恋が答えることはなかった。代わりに、にんまりとした笑顔を、更に横に広げて笑った。
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