レテラ・ロ・ルシュアールの書簡
* * *
城に戻った僕らは、真っ先に紅説王へ会いに行くことになった。
晃や他のお付きの者たちは自室に行こうとしていたけど、それを僕が止めて研究室に案内することにした。自室に行っても、王は殆どおられない。紅説王は研究室にこもることの方が遥かに多い。
「おにいちゃんって、こうとくさまに詳しいのね」
火恋が僕に手を繋ぐように要求しながら言った。僕は火恋の手を握る。火恋の手は僕の手のひらにすっぽりと覆われてしまった。
「まあ、何だかんだで長くここにいるからね」
「ふ~ん」
「ずっと、こちらにいらっしゃるのですか?」
僕は不安そうな声に振り返った。今のは、明らかに後ろからついて来ている晃だった。
「まあね。どれくらいになるかなぁ?」
「そうではなくて」
晃は訂正するような口調で言って、
「あの、お国に帰られたりはしないのですか?」
「うん?」
(どうしてそんなことを聞くんだろう?)
僕はちょっと不安になる。
晃は僕にいて欲しくないのか?
「え~と、そうだな。魔竜討伐が順調だから、そのうち帰還命令があるかも知れないな。陽空は、あと半年の任期になったって言ってたから。ヒナタ嬢と燗海さんはしばらくないだろうけど、僕はそのうちにあるかも……あっ、陽空っていうのは――」
「そうですか」
晃は、説明しようとした言葉を遮った。その声音と表情は、曇っていた。
(どうかしたのか?)
尋ねたかったけど、何となく怖くて訊けなかった。他の人相手なら、がんがん訊いていけるのに、晃相手だと、どうも調子が狂う。
それに、どうしてさっきから敬語なんだろう。再開したときは普通だったのに。
僕はぐるぐると自問しながら、廊下を歩いた。
しばらく無言が続いて、居た堪れなくなった僕は言葉を切り出した。
「晃は、今どこの町にいるの?」
「オウスです」
答えてくれた声音が明るくて、少しほっとする。
「オウスって、この王都カムヤマから、小さな町村を二つまたいだところにある城塞都市だったよね」
「はい。そうです」
「そっか……」
会話が途切れそうになって、僕は思わず言ってしまった。
「じゃあ、手紙のやり取りくらいは出来るよね」
「ああ、そうですね」
晃は、はっとしたように手を叩いた。
嬉しそうに笑ってくれる。僕は心底安心した気持ちになった。
この笑顔が、ずっと見たかった。
目頭が熱くなってきて、僕は慌てて話題を変える。
「と、ところでさ、どうして敬語なんだ?」
晃は言い難そうにして、苦笑を浮かべた。
「だって、お城で働いてるんでしょう? あの頃は子供だったし、気づかなかったけど、お城で働く外国人っていったら、外交官とか偉い人じゃないですか。敬語を使わないと、失礼になります」
違いますか? と、付け足すように、晃は目線を送った。
「別に僕は構わないけどな。元々うちの国はそんなに敬語とか使わないし。もちろん、初対面の人とか大臣とか王とかには使うけどね」
「へえ」
晃は興味深そうに相槌を打つ。