優しい彼と愛なき結婚
6日後、
悩んでも答えが出ないまま、大悟さんに打ち明けられないままーー
綾人さんが指定した日が訪れてしまった。
今朝はいつも通りに振る舞えた。
お弁当を作り、大悟さんの淹れてくれた珈琲を飲んで、いってらっしゃいとお見送りされて会社に着いた。
定時が、怖い。
残業をして帰宅時間をずらせばいいだけの話だろうけれど、綾人さんのことだ。またしつこく訪ねてくるだろう。
それならきっぱり断るか、大悟さんに打ち明けて助けてもらうか…綾人さんの指示に従うか。3択しかない。
でも大悟さんと綾人さんは兄弟で、これ以上、私のせいで家族の絆を壊すことは気が引けていた。
「聞いてるのか、桜野!」
「す、すみません!」
市野さんとの打ち合わせ中にぼんやりとしてしまった。
「もう一度だけ言うから、聞き逃すなよ」
「はい、すみません」
こんなことしていたら大悟さんにもすぐに見抜かれてしまう。しっかりしないと。
気合を入れて強くペンを握った。