優しい彼と愛なき結婚
大悟さんが寝室を立ち去った後、
思わず上半身を起こしてしまった。
確かに右頬に感じた熱。
ほんの一瞬だったけれど、口づけと捉えていいのだろうか。
胸がざわざわと騒ぎ出して眠るどころではなくなってしまった。
平然と寝れるわけないよね?
しばらく耳を澄ましていると足音が聞こえ、バスルームに行ったようだ。彼がシャワーを浴びて戻ってくる前には、眠っていないと。
再び横たわり、布団に潜る。
焦れば焦るほど、先程の眠気は姿を見せず、頭が冴えるばかりだ。
大悟さんにとっては特に意味のないことだったのかもしれない。そのことを気にして眠れなくなったと知られるには気まずくて、眠れないのならいっそ寝たフリをしようと決めた。
小さく寝息を立てていれば気付かないよね?
いつもイビキはかいてないよね?
大丈夫だよね?
考えれば考えるほど、眠気は薄れていった。