優しい彼と愛なき結婚

借金を返すためにこつこつ働いて返すだけだ。

完済するまで月島家から離れられない。
離れられない?事実だけれどお世話になっている相手になんて言い草だ。


「両親はこんな俺がまともな女と結婚するとは思ってもいないから、喜ぶだろうな。兄貴には探せば好条件の女がすぐに見つかるだろうし。…ま、借金返し終えたら離婚でもするか?」



大悟さんの目元は綾人さんに似ている。
切れ長の瞳も、焦げ茶色の瞳も。

でも、違う。

私が見てきた鋭く冷たい視線ではなく、温かさの感じられる優しい目をしていた。


「仮に私と結婚して、大悟さんにはメリットが一つもないはずなのにどうしてです?」


「だな。思いついたから言ってみた」


「……」


軽いノリのような感じで彼が言うものだから、結婚はそんなに大それたイベントではないとすら思えてきた。

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