聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
「俺はあいつらの見本にならなければいけないのに、情けないな」
「……騎士団の……フレデリック様? は、アーレス様が助けてくれたって言ってましたよ?」
「指導不足だ。あんな現場で呆けるような状態なら連れて行かないとはっきり言うべきだった」
どこまでも、彼の中では自分に責任があるらしい。
ストイック……と以前オスカー王が言ったのを思い出す。
きっと彼はこんな風に、自分を追い詰め、そのたびに強くなっていったのだろう。
(すごいな。でもこれじゃあ……アーレス様は疲れちゃうし。孤独じゃないのかしら)
責任を分かち合えないということは、すべてをひとりで引き受けるということだ。
僻地の軍なら人数的に可能だったかもしれないが、王都の騎士団には百人近い人数がいる。それを、すべて自分の責任で采配しようと思ったって無理だろう。
いずみは少し考えてから、コホンと咳ばらいをした。
「では、アーレス様が怪我をするような体を作ったのは、家を守り料理を作る私ですね。私にも責任があります」
「……! イズミは関係ないだろう。君はよくやっている」
「ですが、アーレス様は怪我をなさったでしょう?」
「それは俺自身のせいだ」
「そう思うなら、フレデリック様が狙われたのも彼のせいでしょう。アーレス様が責任を感じるのは違います」