聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~

毎日朝から騎士団に向かい、一日中訓練なり執務なりをこなしてきて、夕食後は部屋にこもる。そして何やらガタゴトと音を立てている。リドルに聞いてみたところ、筋トレをしているのだそうだ。
昼間訓練してきたんじゃないんですかと言いたくなる。

全く持って艶めいたところのない、それはそれは健全な毎日だ。

(でも、帰ってきて運動できるぐらいに体力が残っている割には、毎日疲れた顔をして帰ってくるんだよね)

一度、「訓練は大変なんですか?」と聞いてみたことがあるが、困った顔をされただけだった。

(疲れているのなら何かおいしいものでもつくってあげたい。旦那様が元気になれるようなものを)

昼食を終え、夕食までの仕込みには早い時間、いずみは自由に厨房を使うことができる。

「ジョナスさん、この粉はなんですかー?」

見つけたのは、小瓶に入れられた黄色っぽい色みの粉だ。
どう見ても小麦粉とかそのたぐいではなく、まさかきな粉? なんて思って開けるとにおいはどうも違う。

「奥様、それは料理用じゃねぇよ。風邪の初期に薬として使用するものだ。乾姜という名で、湯に溶かして飲むと体が温まる」

「薬?」

もう一度匂いを嗅いでみる。

(いやこれ知ってる。何となくだけど、ショウガっぽくない?)

「粉になる前のってある?」

「あるよ。これだな」

出てきたのは、まさしくショウガだった。小さなお芋が二個つながったみたいなゴロっとした見た目で色は黄土色。
ジョナスが言うには、これを細く切って乾燥させて、粉状になるまですりつぶしたものがこの粉末らしい。
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