あなたの愛に包まれて
目覚めを待ちながら
「脳の損傷が大きく・・・意識が戻る保証はないそうです。」
剣持の言葉に匡祐はベッドで眠る千晃を見つめたまま大きくため息をついた。
匡祐は千晃の手をしっかりと握っている。

「いつ日本へ?」
剣持が言葉を続ける。
「昨日の夜戻りました。」
「そうでしたか・・・。」
匡祐のつらそうな表情に剣持が話を続けた。
「つい最近、匡祐様が企業を立ち上げて成功されていることを知りました。」
「千晃も?」
「はい。お嬢様も、私と同じタイミングでお知りになりました。喜ばれていましたよ?匡祐様がどこで何をしているかお嬢様はご心配されていましたから。」
「そうでしたか・・・」
「でもお嬢様は連絡をしようとする私をお止めになって・・・」
剣持が言葉に詰まる。
「・・・」
匡祐が千晃の手を握ったまま剣持を見た。
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