あなたの愛に包まれて
「お嬢様は言葉にされませんでしたが、私にはお嬢様の気持ちが分かる気がしました。」
「千晃の気持ち?」
「はい。きっとお嬢様はあなたを再び財閥のしがらみの中に巻き込みたくはなかったのでしょうね。あなただけでも自由に羽ばたいてほしかったのだと思います。お嬢様が手にすることのできなかった自由な世界で。」
匡祐は千晃の方を見た。

どんなおもいで千晃が財閥を守っていたか匡祐にはわかる。

千晃がどれだけ苦しんでこの3年過ごしてきたのか、わかっている。
でもいざ、誰かに言葉にされると心が張り裂けそうに痛んだ。

「ごめんな・・・」
匡祐は千晃の頬に自分の額をつける。
「ごめんな。ごめん・・・ごめん・・・」
匡祐の言葉に千晃の瞳から涙が流れた。
「聞こえてるのか?」
その反応に剣持と匡祐が千晃の顔を見る。
< 229 / 270 >

この作品をシェア

pagetop