あなたの愛に包まれて
「しかし、今回の婚約も両財閥の後継者としての責任がさらに高まることだと認識しています。財閥の後継者として、コメントを発表されないのはいかがなものでしょうか。それか、用意された質問にしか答えられない教育を受けているんですか?」
記者の中から笑い声が聞こえた。

千晃は小さく深呼吸をした。
「私も財閥の後継者として彼女の気持ちはわかります。我々が背負うものは皆さんが思う以上に大きく、私たちはそれを自覚しています。私たちの動向次第で財閥にもしも不利益をうめば何千、何万という方の生活を脅かすことになるのは、恐怖にすら感じています。」
匡祐が助け舟を出す。
「表情一つ、言葉一つ、選ぶのに慎重にもなります。質問を事前にいただいたのにもたくさんの理由がありますが、それだけの責任があるからです。」
匡祐が千晃を見る。
「私が惹かれた部分でもありますが、彼女は先日の事件の後もすぐに仕事へ戻りました。全身の震えが止まらないままでも、自分が会社の社長としての責任ある仕事をしている以上、自分のことだけで休めないのが現状です。」
千晃は匡祐を見た。
「私たちはちっぽけな存在です。ただの財閥のお飾りといわれることも多い。それは私たちの今後の仕事の成果で評価していただければいいと思っています。ただ、私たちはお互いの財閥で働く方のために、また関係者のために未熟ながら全力で向き合っていることを知っていただきたいと思っています。」
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