あなたの愛に包まれて
「両家の顔合わせはおすみですか?」
記者の質問に匡祐が答える。ほとんどの質問には匡祐が千晃をかばうように答えてくれていた。
「いいえ。実は今日このホテルでこのあと行う予定なんです。みなさんからたくさんのご質問をいただいたり、世間をお騒がせしてしまい申し訳なく、顔合わせよりも先にこうしてお集まりいただきました。」
「ということは両家はまだこの婚約を知らないということですか?」
「いいえ。すでに両親は知っております。同じ世界で今までも幾度となく顔を合わせておりますし、正式な婚約での両家顔合わせが今日というだけです。」
匡祐は質問されたことに対してすぐに答える。
千晃は匡祐の頭の回転の速さに驚いた。知識も多く、そこにユーモアすらのせることができる。
質問されたことへの匡祐の回答を安心し、信頼し聞いていられた。

「千晃さんの手掛けているブランドが最近業績が上がってきていますね。」
「ありがとうございます」
二人に関しての質問が落ち着くと、千晃と匡祐それぞれへの個人的な質問が寄せられた。
「その一方で先日のような事件もありました。」
千晃の笑顔がひきつる。
「犯人は亡くなりましたが、不当解雇ではないかといううわさが広まっています。その件に関してお話しください。」
すかさず会見を進めている司会者がその質問に返事をする。
「その件に関してはすでに神崎の方から皆様にご報告しております。本日はご婚約に関する内容の質問のみでお願いいたします。」
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