25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
「それから、だんだん私達の距離が離れ始めたという気がします。夫が帰って来る回数は目に見えて減りましたし、と言って私の方から、夫のもとを訪れる機会も決して多くはなかった。子供が手が掛かって・・・っていうのはたぶん言い訳ですよね。夫との時間を大切にする為に、小売業に勤めてるにも関わらず、土日休みにしてもらってるのに。電話だって、メールだってあるんだけど、それすらだんだん交わす回数が減ってしまって・・・。何やってたんですかね、私、ううん私達・・・。」


後悔を吐き出すように言う渋谷さん。


「夫婦って難しいね。心も身体も通い合わせて、幸せになろうって誓い合って、家族の基本単位になって。ひとつ屋根の下で生活して。本当にお互いのことなんか知り尽くして、実際に言葉なんか交わさなくても、分かり合えてるって経験をそれこそ、数えきれないくらいして。でも・・・やっぱりそれだけじゃ、ダメなんだよ。ちゃんと言葉に出さなければ、伝わらないこともたくさんある。こんなこと言わなくてもわかってるだろう、伝わっているはず。その積み重ねでいつの間にか、自分達でも驚くくらいの距離が出来てしまってることがある。私達がまさにそうだった。パートナーのことが嫌になったわけじゃない。お互いに好きで、信頼してるがゆえに、必要なコミュニケーションをおざなりにしてしまって・・・結果、取り返しのつかない過ちを犯してしまった。」


そう私が言い終えた時、渋谷さんがハッとしたように私の顔を見た。


そして流れる沈黙。少しして、それを破ったのは渋谷さんだった。


「成川さん。」


「はい。」


「もし、状況が私が想像してる通りなら、私は夫を許せないと思います。私の至らなさが原因の1つだと、頭では理解出来てたとしても、やっぱり許せません。離婚します。」


「渋谷さん・・・。」


「でも、今、成川さんのお話を聞いて、私、自分の心の底に自分で沈めてしまっていた思いに気が付きました。」


一拍置いて、彼女は言った。


「私、信じます、夫のことを。今まで真実を知る事が怖くて、逃げてました。でも、私、夫を信じたいです、大切な人だから信じます。だから、その思いが間違ってないことを確かめる為に、今度の週末こそ、キチンと夫を訪ねてみます。」


そう言い切った渋谷さんの顔を、今度は私の方がハッとして見つめていた。
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