25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
そして渋谷さんは、今度こそ本当に週末、旦那さんの所へ行った。列車が到着すると、プラットフォームには、旦那さんが迎えに来てたそうだ。


それから家族4人で久しぶりに、ドライブして、食事をして、そしてお子さん達が寝たあとに、2人でキチンと向き合って、話をしたんだって。


旦那さんの仕事は、この半年あまり、本当に大変だったそうだ。現地での新規事業立ち上げを、地元企業との合弁で行っていたのだが、トラブルが発生して、その対応に追われる日々か続き、土日祝返上なんてことも珍しくなかったらしい。


結果、自宅に帰ることもなかなか出来ず、ゆっくり奥さんと電話やメールで会話する余裕もなく、こんな生活をしていることを知られて、奥さんに余計な心配を掛けたくないなんて、痩せ我慢も重なって、奥さんとのコミュニケーションがどんどん少なく、また素っ気なくなって行ってしまったらしい。


それに渋谷さんの危惧していた事態も起こりかけていた。そんな生活に心身ともに疲れ切っていたところに、相手企業の20代の女性に優しい言葉を掛けられ、とうとう一線を超える寸前まで、親密になってしまったんだそうだ。


でも、いよいよそうなる約束をしたデートに出掛けようとした時、玄関に飾ってあった家族写真が目に入り、我に返った。デートはドタキャンし、以後その人とは仕事場で以外には会ってない。信じてくれと旦那さんは自分から告白して、頭を下げたと言う。


それに対して、渋谷さんは怒った。でも、それは浮気未遂に対してでなく、自分に何も打ち明けてくれずに、1人で抱え込んで、辛い思いをしてた、夫婦にあるまじき、旦那さんの水臭さに対して。


そして、そんな旦那さんの苦境に気付こうともしなかった自分の妻としての至らなさを詫びたんだそうだ。


「そして、お互いに涙を流して、謝罪しあって、抱き合っていたら、ガラッてドアが開いて・・・全部子供達に聞かれて、見られてました。上の子には『もう、年頃の娘に見せつけないでよ』と冷やかされ、下の小学生の息子にもニヤニヤされて。私達は真っ赤になって、俯くことしか出来ませんでした。」


と話してくれた渋谷さんは、その時も顔を赤らめていた。
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