25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
そんな渋谷夫妻の顛末を聞いたあと、私は隆司さんと会った。


「よかったね。」


「ああ、よかった。」


仕事帰り、行き交う人々の姿が、窓から見えるカフェで、私達は向き合っていた。


「ごめんなさい。」


私は頭を下げた。


「私が誤解したばかりに、あなたにはもちろん、渋谷さんにも嫌な思いをさせてしまった。反省してます。」


そんな謝罪の言葉を口にする私に


「仕方ないよ。これが・・・今の俺達の現実なんだ。彼らと俺達はあまりにも違い過ぎる。」


「えっ?」


「裕美さんは、悩んで苦しんだ末に、だけど渋谷を信じた。一方、君は俺と裕美さんが一緒にいる姿を見た時、もう俺に疑いの目を向けることしか出来なかった。」


「・・・。」


「責めてるんじゃない。渋谷と裕美さんの間にはあった大事なものが俺達にはなかった。かつてはあったお互いへの『信頼』、だけど俺達は自らそれを手放してしまった。」


「隆司さん。」


「渋谷は大切な奥さんを裏切ろうとしたけど、土壇場で踏み止まった。1枚の写真が奴の目を覚まさせたんだってな。だけど、俺は出来なかった。あの直前、俺は君の屈託のない、俺を信じ切ってる声を聞いた。本当に葛藤したよ、だけど、俺は踏み止まれなかった。俺と渋谷のあまりにも悲しい人間としての違いだった。」


「・・・。」


「そして、俺も君が店長と勤務が終わってから、たまたま3回続けて、電話で話してる姿を見たら、もう疑心暗鬼に陥ってた。あの直後に、俺と渋谷さんのことがなかったら、たぶん俺の方が君に詰問してしまってただろう。」


そう言った隆司さんの表情も、聞いている私のそれも、悲しみと寂しさの色を帯びている。


「結局、取り戻すなんて無理なんだな。本当はそんなこと、最初から分かってた。だから別れたんだもんな。でもなんとか取り戻せないかってもがいたけど、やっぱり、もうどうにもならないんだ。残念ながら・・・。」


「・・・。」


「来週の夏休みなんだけど、久しぶりに学生時代の友達と、泊まりで釣りに行くことになった。あとは・・・溜まってる家事をやっつけちまわないとな。」


そう言うと隆司さんは窓の外に、目をやる。私はそんな彼をただ言葉もなく、見ていた。
< 126 / 156 >

この作品をシェア

pagetop