25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
だけど


「わかってるんだ、お互いに対する愛情が消えてないなんて、最初からわかってるんだよ。だけど許せない、信じられない。でも・・・って結局、その繰り返しで来ちゃった。これ以上は、もう不毛なんじゃないかな・・・。」


表情を一転させ、私はそう吐き出すように言った。悔しかった、情けなかった。私は唇を噛み締め、俯く。そんな私を渋谷さんは、少し見つめていたけど


「残念です。」


とポツリと言った。


「えっ?」


思わず顔を上げて、聞き返す私に


「不倫はいけないことです。この前、私も夫がそんな裏切りを本当にしていたら、許せない、離婚するって、はっきり言ったことは覚えてます。自分がそんなことを言ったくせに、なんだって言われると思いますけど、でもおふたりがこのまま本当に別れてしまうのは、残念としか言いようがないです。」


「渋谷さん・・・。」


「実は昨日、夫が西野さんと呑んだんです。」


「えっ?」


「そこでいろいろ、話してくださって。とにかく、自分の過ちを後悔してるとおっしゃってたそうです。そしてお話を伺って、また先日、成川さんからお聞きしたことを思い出して、私達は気が付いたことがあるんです。」


「・・・。」


「おふたりは結局、誰の力を借りることなく、自分で、ちゃんとパートナーの心を取り戻しているって。」


その渋谷さんの言葉にハッとする。


「逆に言えば、パートナーの自分への愛情と信頼に改めて気が付いて、目を覚まして、そして最愛の人のもとに自分の意思で戻られたんです。もちろん、本当は裏切りなんかしない方がいいに決まってるし、しちゃいけない。だけど、おふたりの愛はやっぱり本物だったんだって思います。」


「渋谷さん・・・。」


「私達が口を挟む話じゃない、余計なお節介だとは分かってます。でも、私達は自分達が理想と仰いだおふたりが、このまま終わってしまうのは、見るに忍びないんです。少し時間を置くのは構わないと思います。でも、なんとかもう一度、キチンとお話をされたら、いかがですか?」


そうか。このことを伝える為に、渋谷さんは今日、わざわざ私を誘ってくれたんだ。まるで、自分達のことのように、懸命になってくれてる渋谷さん夫妻の真心に胸が熱くなった。でも・・・。


「ありがとう。」


今の私にはそう彼女にお礼を言うのが、精一杯だった。
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