25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
その日も気が付けば、時計の針は夜10時過ぎを示していた。


「キリがないな。山下、今日はここまでにしよう。」


「でも・・・。」


この日は金曜日。俺の言葉に山下は不安そうな表情になる。


「続きは明日、出て来てやるよ。今日徹夜するより、明日仕切り直した方が効率いいだろ。」


「わかりました。じゃ、私も・・・。」


「いや、あとは俺1人でなんとかなる。先週も土曜日出勤だったんだから、君は今週はちゃんと休め。」


「でも、それじゃ課長に申し訳ありません。」


山下は言うけど


「大丈夫だ。少なくとも山下より体力もあるし、給料もいっぱいもらってる・・・はずだ。さ、帰ろう。」


笑いながら、そう言うと、俺は山下を促して、オフィスを出た。


時間も時間だから、当然そのまま、家に帰るつもりだったのだが


「お腹空いちゃいました。ちょっとだけ、寄っていきませんか?」


と珍しく山下がおねだりするように言って来た。今は2人だし、終電までそんなに時間があるわけではなかったから、どうしようかと思ったが、腹が減ったのは確かだし、山下を労ってやりたいという気もしたので、居酒屋に入って、食事がてら、少し呑むことにした。


時計を気にしながら、ビールはジョッキじゃなくて、瓶ビールを2人で分け、お腹にたまる物を最初から頼んで、ショートコースで切り上げるつもりだったが、つい話に花が咲いてしまい、気が付くと終電の時間が迫っていた。


「ヤバい、山下、終電が。」


「は、はい・・・。」


なぜか反応の鈍い山下の手を引くように、店を飛び出して、駅に向かって走るが


「ちょっと課長、待って下さい。」


性格なんだろう、山下はのんびりムード。とうとう終電には間に合わなかった。
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