25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
午後に入った。平日だから、訪れるのは小さいお子さん連れの女性か、仕事をリタイアしたくらいのご夫婦連れ。


女性は自分の物を選んでるというより、お子さんや旦那さんの物を見ている方が多いし、老夫婦(と言うのも、申し訳ないくらい、皆さんまだ若々しいが)の方も、奥さんが旦那さんの物を見繕って、コーディネートしてあげてる姿が圧倒的。


私も声を掛けられて、アドバイスを求められたりしたが、当然商品知識もなく、あくまで自分の感覚でしか答えることが出来ない。


「それでいいんですよ。今はわからないことはわからないって言って、先輩を呼べばいいですし。私達は自分達の着る服はもちろん、子供や男性の服に対しても、ある程度知識もあるし、見立ても出来ますからね。」


お客様が見て、乱れた売場の商品をたたみ直しながら、渋谷さんは言う。そうだよな、子供や旦那の服を選ぶのって、主婦の仕事の1つだもんな、なんて思う。


渋谷さんの勤務は15時半まで。やはり下のお子さんの下校時間に合わせてるらしい。


「今日はありがとうございました。」


「いえ、とんでもありません。最後までお付き合い出来なくて、申し訳ないんですけど、あとは何かあったら店長にお願いします。」


「はい。お疲れ様でした。」


「お先に失礼します。」


笑顔で、そう言うと、渋谷さんは帰って行く。1人になって、正直心細くなったところへ


「成川さん、じゃ少しレジ入ってみましょうか。」


と店長に声を掛けられ、えっいきなり?と驚いたが、どうやらレジが混んだので、サッカーと呼ばれる商品の袋詰め作業に入れということ。


お買い上げの商品を丁寧に袋に入れ


「ありがとうございました、またお越し下さいませ。」


とにこやかに挨拶する。スーパー時代は食品ばかりで、衣料は扱ったことはなかったが、服をたたむことなんて、それこそ毎日やって来たことだし、お客への応対はスーパー時代の経験が役に立つ。


「いいですね。初日とは思えませんよ。」


店長がそう言って、満足そうに頷いていた。
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