25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
その日も、朝から慌ただしく動いていた。私は商品整理や品出し、レジ打ちといった基本業務だけでなく、商品の発注や飾り付け(ディスプレイ)などの業務を任されるようになっていた。


「このディスプレイ、いいじゃないですか?」


夏休みが目前に近付いている。私はマネキンに、母親と小学生の娘さんが、ちょっとした行楽に着て行くような雰囲気のディスプレイを施した。


着せ終わって、私が少し離れて、出来栄えを確認していると、店長が声を掛けて来た。


「そうですか?そう言っていただくと嬉しいです。」


私はホッとして、笑顔になる。


「渋谷さんがいろいろ教えて下さるんで助かります。」


という私の言葉を聞いて


「いえ、それは成川さんのセンスがいいんです。」


渋谷さんが言ってくれる。


「そうですね、おふたりがいれば、もう平日の昼間は全然大丈夫ですね。」


なんて店長が言い出すから


「そんな、私はまだ試用期間ですから。」


と答えるが


「そうだ。ちょうどいい機会だから、お話しておきます。」


と店長が切り出して来た。


「実は、今月いっぱいで、夜の学生アルバイトが2人抜けることになって。」


「そうなんですか?」


「どこの業界もそうなんですけど、夜の時間帯の募集はなかなか今は、集まらなくて。」


そうらしいな。


「そこでおふたりが揃っている日は、僕は遅番にシフトチェンジさせてもらうことにします。」


「えっ?」


店長の言葉に、私達は驚く。


「平日は、売上構成から見ても、朝よりやっぱり夕方以降ですからね。おふたりには申し訳ないんですけど、よろしくお願いします。」


そう言って、頭を下げると店長は離れて行く。私達は思わず顔を見合わせてしまった。


「参りましたね。」


と渋谷さん。


「ええ、渋谷さんはともかく、私なんてまだまだ新米なのに・・・。」


事情は理解できるけど、正直困惑してる私に


「私も夏休みに入ると、子供達がいるんで。まぁ上の子は中学生だから、もうある程度任せられるんですけど、部活が結構キッチリあって、朝から出てしまうと、下の子が1人になってしまうんで。それに・・・。」


と、なにかを言いかけた渋谷さんは


「まぁ、大丈夫だとは思いますけど。」


と言い直すと、私から離れて行った。
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