2人のあなたに愛されて~歪んだ溺愛と密かな溺愛~
『お待たせしました』


キッチリまとめて、資料を山下専務に手渡した。


『ありがとう。あ、そうだ、柚葉ちゃん。君、映画好きだったよね。今度、一緒に見にいかない?』


え?


どうして、既婚者の専務が私を映画に?


私が社長の彼女だって、もちろん知ってるのに…


返事に困ってると、


『冗談だよ、なんだよ、その顔』


専務が、笑いながら言った。


こういう所が…苦手なんだ。


本気なのか、冗談なのか…


本心が掴めないような話し方をいつもする。


私は、こういう軽い感じの人は好きじゃない。


柊君には、わざわざ言わないけど、たまにからかわれるのが、本当に疲れるんだ。


どうしてこんな人が専務なんだろう。


仕事が出来るのは、わかるんだけど…


人として、信用出来ない。


専務とは、知り合いの紹介で出会ったって、柊君が言ってたな…


設立当初から一緒に働いてるみたいだった。
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