エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
「あの、わたしは……!」
「お待たせいたしました。白ワインと前菜をお持ちしました」
日菜子が口を開いたタイミングで、料理が運ばれてきて話が終わってしまった。
不完全燃焼だったが、目の前に置かれた色とりどりの前菜を見ると意識が完全にそらに向く。
アボカドの乗ったブルスケッタに、セロリや茄子、オリーブが煮込まれたカポナータ。ジャガイモを使ったキッシュはこんがりと焼かれている。
「おいしそう!」
目を輝かせた日菜子に、拓海が目を細めた。
「せっかくだから、乾杯しようか」
彼がグラスを持ち上げたので、あわてて倣う。けれどなにに乾杯するのだろうか。そもそも不本意にここに連れてこられたのに、乾杯はおかしいのではないかと、ふと思う。
「図書館の建て替え案件。松風の案、先方がすごく喜んでくれた。だからそのお祝い」
「そうだったんだ……」
驚きで目を見開いた日菜子だったが、次いで湧き上がる喜びに顔をほころばせた。
控えめな笑顔だったが、うれしさが溢れ出るような笑顔だ。
「なにその顔……」
拓海が顔を背けたのを見て、日菜子は一瞬にして表情を硬くした。自分の笑顔が拓海を不快にしたのだと思ったのだ。
会社ではできるだけ喜怒哀楽を表現しないようにしてきたのに、いろいろ知られている拓海の前だから気が緩んでしまっていた。
眼鏡のブリッジを押し上げて、顔を隠す。
「いや、今のは違う。あー……だから」
言いたいことをうまく言葉に出来ずに、髪をかき上げている。気まずい雰囲気になってしまう。
(どうしてわたしなんか誘ったんだろ。やっぱり何度考えてもわからない)
まだ食事も始まっていないのに、変な空気になったしまった。だからと言って日菜子が謝るのはなんだか違う気がして黙り込む。
「これ、これが全部悪い。没収な」
「あっ!」
拓海はワイングラスをテーブルに置くと、日菜子に手を伸ばし彼女の眼鏡を奪う。
慌てて手を伸ばしたけれど、すでに拓海の胸ポケットの中に収まっていた。
「なんで顔隠すんだよ。すごく可愛い顔して笑ってたのに。さっきのはその……普段俺にはそういう顔しないから、なんか……あの、その……ちょっと新鮮だっただけだ」
また彼が日菜子から視線をそらす。けれどさっきと違うのは、照れているからだということが、日菜子にもわかる。