エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
「そ、そう……なの?」
どういうふうに返すのが正解なのかわからずに、日菜子は短く言葉を返すことしかできない。
そんなふうに思われているとは……日菜子の頬がほんのりと赤く色づく。お互い気持ちをどうもっていっていいものか、さっきとは違うくすぐったい気まずさを、拓海がかき消す。
「とにかく……だ! お前の案がすごくよかった。だからお礼とお祝いの、乾杯」
改めてグラスを掲げた拓海にあわせて、日菜子も控えめにグラスを持ち上げた。
眼鏡のなくなった彼女の顔には、さっきとは違い輝くような笑顔が浮かんでいた。
お互いワインを飲んだことで、さっきまでの緊張が緩んだ。食事が運ばれてくるとすっかりもとのふたりに戻っていた。
ふたりの共通の話題といえば、やはり仕事の話が中心になる。普段はお互い忙しくしているので、話す内容は業務に必要なものだけ。けれど酒が入った今日は、打ち合わせで面白かった話や、苦労話などいつもとは違う会話に花を咲かせた。
「図書館の担当の人に、松風のこと話したら驚いていた。世間は狭いって」
「確かにそうかも。だってわたしも懐かしいなって思った」
まさか地元の図書館の立て替えにまさか自分が関わるとは、高校生のときの日菜子には想像してなかったことだ。
「地元は静岡なんだろ? 大学で東京に?」
「うん。そこからはずっとひとり暮らし」
話の内容が仕事からプライベートなことに変わっていく。
「小さいころのお前って、どんなだった?」
ワインを傾けた拓海が、さらっと口にした言葉に日菜子が一瞬動きを止めた。聡い拓海はもちろん気がついていたけれど、素知らぬふりをしている。
「んー……普通かな?」
「普通って?」
言葉を濁す日菜子に、拓海はつっこんだ。
「え? 普通は……普通だよ」
そっと視線を俯かせた。ついさっきまでとは違いまとう雰囲気が頑なに会話を拒んでいた。
「そうか、普通だったんだな」
「えっ? あ、うん」
いつもの拓海なら、もっとあれこれと聞いてくるだろうと思っていた日菜子はあっさりと引いた彼に拍子抜けした。と、同時に安堵する。
(よかった……あの頃のことはやっぱりまだ思い出したくない)
ふと頭の中をよぎりそうになった幼少のころの思い出に急いで蓋をした。そしてそれを振り切るように話題を変える。