エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
「あなた、金曜日。南沢くんとふたりで飲みに行ったの?」

 普段聞かないような怒りのこもった声に、驚いた日菜子は短く返事をする。

「……はい」

 嘘をついても仕方がない。脇坂はなにも知らないで日菜子を問い詰めているわけではないのだろうから。

「あの日、彼を誘ったのはわたしが先だったわ。なのに、どうしてあんたみたいな子が、抜け駆けするわけ? どうせ仕事教えてもらったお礼とでも言って、嫌がる彼を無理やり連れて行ったんでしょう?」

「ち、違います」

 誘ってきたのは拓海の方だ。そう説明しようと思ったけれど、反論したことで脇坂が余計に怒りはじめた。

「嘘言わないで。そうじゃなければ、彼があなたと食事になんか行くわけないじゃない。不釣り合いって言葉知らないのかしら? アシスタントになったからって、彼の周りをうろついて。目障りなのよ!」

 そんなつもりではなかった。ただ誘われて楽しかった。

 誘ってきたのは拓海だったが、それは単なる仕事のお礼だ。彼もそう言っていた。

 けれどそれ以上を期待してしまった自分に早速罰があったったのだ。

「とにかく、いい気にならないことね。身の程をわきまえなさい」

 脇坂が脅しつけるように日菜子の肩を押した。

「あっ……つぅ」

 日菜子の持っていたマグカップから、カフェオレがこぼれて手にかかった。

「あ……」

 脇坂もさすがにまずいと思ったのか、すぐに逃げるようにして給湯室から出ていった。

 急いでマグカップを置いて、水道の水で手を冷やす。

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