エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
「やっぱり、お前気がついてなかったんだな。西野さんかわいそ。ちょっと同情するわ」

 ひとり呆れた顔をする拓海だったが、日菜子は拓海の言っていることが全く理解出来ない。

「わたしに、虫除けなんて必要ないでしょ?」

 そもそも〝虫除け〟なんてものはモテる人に必要なものであって、日菜子のような人間には縁遠いものだ。

「松風はまったく気がついていないみたいだけど、西野さんが食事に誘ってきたのは本気だぞ」

「え? だって仕事のお礼だって」

 本人もはっきりそう言っていた。

「今まで、そういうことあったのか?」

「ううん」

 これまで西野のアシスタントをしていた。そのときはあんなふうに食事に誘われることはなかった。

「西野さんは、急に綺麗になったお前を見て焦ったんだろうな。まあ、俺もだけど」

「え? ちょっと、待って」

 いろいろと理解できずに、パニックになりそうになる。涙なんかとっくに止まっていた。

「待つって、何を待てばいいんだ?」

(いや、その通りなんだけど……)

 拓海は呆れた様子でクスクスと笑いはじめた。

「とにかく俺は、好きな女が言い寄られているのを指をくわえて見ているつもりはな
い」

「好きって……わたしのこと……?」

 思わず聞き返した日菜子に、拓海も驚いたようだ。

「当たり前だろ。そうじゃなければみんなの前でわざわざ宣言するなんてことしない」

「そんな、だってそんなこと一言も言わなかったじゃない」

 拓海の気持ちがわからずにずっとモヤモヤしていた日菜子は、責めるような口調になってしまう。

「そんなこと、言わなくてもわかるだろ。好きでもない女を誘うなんて面倒なことするわけない。今日だってデートだって、俺はちゃんと言ったぞ」

「そんなの、あんな軽く言われたら冗談だと思うじゃない」

 だからこそ日菜子は拓海の態度を〝思わせぶり〟だと思い悩んでしまったのだ。恋愛になれていない日菜子に、察しろというほうが無理がある。

 拓海もやっとそのことに思いが至ったようだ。
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