あやかし神社へようお参りです。②



 「久しいのお。麻よ、顔を出すのが遅いぞ。待ちくたびれておったわ」


 端正な顔立ちをしたその男は、細い目をさらに細くして笑う。

 藤色の狩衣に、結守神社の社紋が薄く描かれた白い袴。三日月のように大きく反った長い刀を腰に差すその男は、よく知っていた。


 「円禾丸《まどかまる》!」


 結守神社の御神刀、円禾丸だ。

 傍まで駆け寄ると、円禾丸は私の頬を両手でつまむ。


 「この頬も実に久しい」


 円禾丸は私の頬を伸ばしたりこねくり回して堪能しているようだ。


 「……それ、初めて会った時もしてた」


 一通り楽しんだのか、手を離した円禾丸は満足げに微笑む。少しヒリヒリ痛む頬を押さえながら唇を尖らせる。ふと、室内の奥に誰かの気配を感じてハッと我に返った。


 「誰かいるよね?」

 「ああ、迷い込んだらしいが、害はないと分かっておったから、話し相手になって貰ったんじゃ。おうい、爺さん、爺さん」


 円禾丸は振り返って声を張り上げる。棚の陰に隠れていた誰かがゆっくりと立ち上がり顔を覗かせた。

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