あやかし神社へようお参りです。②
 何度も頭を下げながら社を去っていった富岡さんを鳥居の前まで見送った。見上げながら階段を上れば、裏の社の提灯に火が灯り始めている。
社頭に屋台を設営し始めた妖たちが声をかけてくれた。


 「こんばんは、巫女さま。いい月夜ですね。社務所に人間がいたのを見かけましたよ」


 私の肩くらいまでしかない小さな妖が私に声をかけた。一つ身と呼ばれる布一枚で身頃を仕立てたものに蓑を肩にかけた格好だった。


 「子泣き爺……」

 「昨夜も社はなんだか騒がしい様子で。どれ、この噂好きの爺に教えてくださいな」


 にっこりと優しく微笑まれて、凝り固まっていた胸がほっと解ける。ぽつりぽつりりと話し始めると、子泣き爺は驚いた顔を浮かべた。


 「なんと、あの雪童子が社に帰ってきているのですか。はてさて、最後に会ったのは大正の初めの方だったか。そのころから、人間に憧れていましたからね。もうこっちへは二度と戻って来ない、そう言って出て行ったきりでした」


 そんなに昔から、と目を丸くした。


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