しあわせ食堂の異世界ご飯4
「緊張しなくて大丈夫だよ。この前教えた通り、時間がかかってもいいから」
 アリアの優しい声に、リズは真剣な表情で頷く。
 リズが手に持つ包丁は、アリアが誕生日にプレゼントしたものだ。
 初めての自分の包丁にとても喜んだリズだが、危ないので使えるのはアリアが近くにいるときだけ。
 なので、こうして使う機会があるときは嬉しくてたまらないのだ。
「玉ねぎはまず、半分に切る」
 トンと、幼いリズでも簡単に玉ねぎを半分にすることができた。それだけ、この包丁は切れ味がいい。
「それからまな板の上に置いて、芯を取るんですよね?」
「うん、そうだよ」
 リズはアリアに教えてもらった手順通りに、玉ねぎを切っていく。包丁が危険なものだということを理解しているので、ひとつひとつの動作がとても丁寧だ。
「芯を取るのが、一番難しいです……」
 玉ねぎの切った面をまな板につけ、包丁の先部分を使ってゆっくり芯を取り除く。それができたら、トントントンと、くし形に切っておしまいだ。
 切り終わった半分の玉ねぎを見て、リズはホッと息をつく。
「ちゃんと切れました、アリアお姉さま」
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