しあわせ食堂の異世界ご飯5
 久しぶりのミンチ作業に、カミルがすでに疲れた表情を見せる。
「すでに腹ペコだっていうのに……」
 お腹に手を当てて、けれどカミルはミンチにするために包丁を持つ。
 今はしあわせ食堂の営業終了後なので、とっくにお昼を過ぎている。さすがに空腹でのミンチ作業は過酷だったろうかと思ったが、そこへリズが手を上げた。
「カミルお兄さま、わたしに任せてください!」
「え? だけど、リズの細腕じゃミンチなんてとてもじゃないけど無理だぞ?」
 たとえできたとしても、膨大な時間がかかるとカミルが苦笑する。けれどリズも引かないようで、「大丈夫です!」と自信満々に自分の胸を叩く。
「包丁の扱いにも慣れてきたから、大変な作業だってやってみせます!」
「……わかったよ、リズに任せる」
「やった!」
 リズが作業台の上でトントンと肉をミンチにする作業を始めた。しかしまだ力がないこともあって、だいぶ時間がかかりそうだ。
「いいか、まずは肉の塊を切り分けて、ひとつずつミンチにしていくといい」
 以前ミンチ作業を行っていたカミルが隣でコツを教えているので、なかなかいい兄弟弟子の関係になっている。見ていて微笑ましい。
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