我妻教育3
「行かなくて結構です。
先方からも、会社として責任を問われたのであって、垣津端さん個人に責任がある訳じゃないと言っていただけています。
誰が側にいても防げなかったと思います。
社長の私がお詫びをして、この件はこれでカタがついたんです」

責任を感じるなと言われても…
「でも…」

「いいから!」
穏やかだった社長の顔が一転して、渋い表情になった。

「食品最大手、天下のキンポウゲのお嬢様に怪我をさせた料理教室なんて、鶴の一声で、簡単に潰されてしまう。
うちに在籍している間は、キンポウゲにはこれ以上下手に関わらないでちょうだい!
話はこれで終わったから。これ以上波風立てないで。お願いね」

両手を合わせて懇願された。

波風…。そう言われると、何も言えない。

食に関わる仕事をして、キンポウゲ食品を敵に回す恐ろしさは分かっているつもりだ。

あたしに責任はないと言ってくれてはいても…。
実際に会社は損害被ってるし、キンポウゲに睨まれ、あたしは非正規雇用の身。

「…あの、あたしは、どうしたらいいんでしょうか?どうなるんでしょうか?」

社長はフーッと細いため息をついた。
「今の時点でははっきりとしたことは言えないけれども…。
来年の更新は、更新したとしても、契約社員としての更新になるかと思います」
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