我妻教育3
啓志郎くんが手に持っている婚姻届に、風が吹き付け、ガサガサと音を立てる。
「ごめんね…」
唇を噛みしめ、項垂れる。
「そんな顔をしないでくれ。笑ってくれないか?」
見上げたら、啓志郎くんは悲しげな瞳で、やんわりと笑みを浮かべた。
「私は、未礼の笑顔がとても好きだ」
「え…」ドキンと胸が高鳴り、緊張する。
「私は、未礼には、ずっと笑っていて欲しいのだ」
言ったあと、頬のわずかな微笑が消えた。
かすかに眉を寄せて、考えるようにゆっくりと目を閉じて、小さく息をついた。
それから目を開け、意を決したように、固く結ばれていた唇が静かに開いた。
「…そうだな。結婚は、未礼の言う通り、まだ早いのかも知れぬ」
慎重に丁寧に紡がれていく言葉に、集中して耳を傾ける。
「父にも言われたばかりだが、後継者となるには、まだまだ私には足りないものが多い。
今結婚をしても、今の私では未礼を幸せにできないだろう。
早く一人前になりたいと、急いていたが…。
物事には順序があるのだな」
苦々しくも、納得したような口調だった。
啓志郎くんは、思いを馳せるように、飛び立つ飛行機を眺めた。
風が、啓志郎くんの前髪を揺らす。
憂いのある横顔は、どこか吹っ切れたような、清々しさがあった。
「ごめんね…」
唇を噛みしめ、項垂れる。
「そんな顔をしないでくれ。笑ってくれないか?」
見上げたら、啓志郎くんは悲しげな瞳で、やんわりと笑みを浮かべた。
「私は、未礼の笑顔がとても好きだ」
「え…」ドキンと胸が高鳴り、緊張する。
「私は、未礼には、ずっと笑っていて欲しいのだ」
言ったあと、頬のわずかな微笑が消えた。
かすかに眉を寄せて、考えるようにゆっくりと目を閉じて、小さく息をついた。
それから目を開け、意を決したように、固く結ばれていた唇が静かに開いた。
「…そうだな。結婚は、未礼の言う通り、まだ早いのかも知れぬ」
慎重に丁寧に紡がれていく言葉に、集中して耳を傾ける。
「父にも言われたばかりだが、後継者となるには、まだまだ私には足りないものが多い。
今結婚をしても、今の私では未礼を幸せにできないだろう。
早く一人前になりたいと、急いていたが…。
物事には順序があるのだな」
苦々しくも、納得したような口調だった。
啓志郎くんは、思いを馳せるように、飛び立つ飛行機を眺めた。
風が、啓志郎くんの前髪を揺らす。
憂いのある横顔は、どこか吹っ切れたような、清々しさがあった。