執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~
彼女の姿をぼんやりと目で追ってから、私は小さくため息をついた。
私が勤める伊野瀬コーポレーションは、日本全国で展開しているINO’S COFFEEというカフェチェーンで有名な会社だ。
元々は今から五十年前にコーヒー豆の輸入商社として設立された。その後業務用のコーヒーマシンや焙煎機の販売をはじめ、現在ではコーヒー以外の食品も取り扱っている大企業だ。
私、広瀬まどかは六年前に伊野瀬コーポレーションに入社し、そこで同期の瀧内雅文に出会った。
同い年で気が合って一緒にいると楽しくて、自然と惹かれて恋人になった。幸せだと思っていた。
それなのに、今から三年前。私はずっと雅文に騙されていたんだと知った。
彼は自分が伊野瀬コーポレーションの御曹司だということを隠して私と付き合い、何も知らずに心から愛されていると信じきっていた私を陰で笑っていたのだ。
本当に好きだったからショックだった。
どうしても許せなかった。
三年たった今でも、その傷はまだ癒えていない。