執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~



 「三年前にまどかを裏切ったままアメリカに赴任した元カレに偶然再会!?」



 そう聞き返され、私はクッションを胸にぎゅっと抱きしめながら首を縦に振る。
 驚いた顔で身を乗り出すのは、私の学生時代からの友人の井口朋美だ。

「しかも、ホテルに行って一夜を過ごしちゃったの!?」

 その質問にうなずくかわりにクッションに顔をうずめて黙り込む。すると真っ赤になった私の耳やうなじを見た朋美は、「あちゃー」とあきれたようにため息をついた。

 ホテルの部屋から逃走したあと、動揺がおさまらなかった私は誰かにこのことを相談したくて、何でも話せる親友の朋美の部屋へと向かったのだ。

「その上、朝になって酔いがさめた途端ろくに話もせずに逃走って。まどかさん、それやり逃げっすね」

 丸顔でほんわかした雰囲気の朋美の隣からそんな容赦ない言葉を投げつけてきたのは、明るい髪色と口元から覗く八重歯がやんちゃな印象の小野寺瞬くん。

 朋美は電機メーカーのOLで、彼氏の瞬くんはアパレル系のセレクトショップの店員さんをしている。朋美は私と同い年の二十八歳で、瞬くんは二十五歳。店に買い物にきた朋美に瞬くんがひと目ぼれして付き合い始めたというふたりは、現在このアパートで同棲中だ。


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